怪物の狂声と人間の恐声

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  きっかり十分後。 施設の南部にある巨大な門の周辺に、武装した男女問わずの集団が集結していた。 彼らは厚みのある灰色の服を着ている。 それは北方支部でしか運用されていない、寒冷地戦用戦闘服だ。 施設内では温度管理がされているが、外は基本的に気温が低く、活動に支障を及ぼすために戦闘服は内部の熱を逃がさず、外の冷気を通さない造りになっている。 そんな隊員達の元に、施設内倉庫から四台の車両がくぐもったエンジン音を響かせながら、ゆるゆると近づいてきた。 門の下に並んで止まった、その迷彩色で塗装された車両は車体を装甲板で覆い、太いサスペンションが付けられた六つの大きな車輪が重圧な印象を醸し出していた。 車体後部には人間を何十人と運搬できるように設計された、屋根付きの四角い荷台があり、後部には出入り用の扉があった。 この車両の名称は【ノアボックス】と言い、北方支部で独自に開発された魔力エンジンを装備した兵員輸送トラックである。 「うう、暑い。外だと丁度良いけど、中だと本当に蒸れるわね。温度を調整出来るように技術開発部頑張ってくれないかな~」 「そうだね。だけど鋼ヶ崎、こんなに装備が充実してるのはここぐらいなものなんだからさ。あまり文句言っては駄目だよ」 門前広場に戦闘服姿の鋼ヶ崎と空城もいた。
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