怪物の狂声と人間の恐声

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「お早う御座います、吉良上等補佐。今日の討伐作戦の指揮、宜しくお願いします」 空城達の近くまで歩いてきたミカルは平然と、明らかに数百キロはありそうなコンテナを地面に下ろして吉良に挨拶する。 「流石、重装備による超長距離山岳歩行試験を合格した人は凄いね。――おはよう、今日も宜しく、ミカル班長」 吉良は関心したように、挨拶を返す。 「ミカル班長、あの地獄みたいな訓練を合格したんですかっ!? うわ、なんだか見直しましたよーっ」 驚愕したのは鋼ヶ崎だ。 重装備による超長距離山岳歩行試験とは、入隊直後の新人隊員が行う訓練を兼ねた試験の事で、その厳しさと難易度の高さには悪い定評がある。 その内容は北部地方にある総距離百キロの山脈一帯を、背嚢、ライフル、重量負荷戦闘服など計八十キロ超の装備で歩き進んで行くものであるが故、合格者は数えられるほど少ない。 「見直したって、今までの俺の評価はどうだったんですか。というか、試験に合格しても何一つ良い事はないですよ……」 前半は困ったように、後半には今にも自殺しそうに言葉を紡いでいくミカル。 鋼ヶ崎は地雷を踏んでしまったようだ。
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