怪物の狂声と人間の恐声

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ミカルの激変に言葉を失う二人。 特に鋼ヶ崎は気まずそうに視線を落とす。 ミカルから発する憂鬱な空気に、吉良は呆れ気味の笑みを作って言う。 「大丈夫、ミカル君の“これ”は俺達と居る時は何時もの事だから。彼、試験に合格しちゃったから隊長に目を付けられてしまってね、後は言わなくても分かるよね?」 その言葉に、勇者の恐ろしさを新人隊員訓練を通して知っている二人は生命維持本能から来る悪寒を感じて、深く頷いた。 「ま、後は宜しくね。俺は今回の作戦を指揮するから色々準備があるからね、これ言うの遅れたかな?」 そう付け足す吉良。 「いえ、ミカル班長から話は聞いていましたから。戦術のエキスパートと聞いたら吉良……上等補佐官しかいないので」 「嬉しい事言ってくれるね、空城君は。まあ、戦術エキスパートと言うより、それしか取り得が無いだけなんだけどね」 温容に、しかし自嘲気味に笑う吉良。 彼が一班長から上等補佐官という高階級に昇任したのは、その頭脳明晰、才知優良な性質による事務及び指揮の、他支部隊員より数段上の優れた才能によるものだろう。 しかし、彼が誰よりも突出しているのは予測能力だ。吉良は、その頭脳に叩き込んだ膨大なデータを処理し、応用し、改良していくことでイリーガルの行動予測を正確に演算する事が出来る。 こんな業が出来るのは天才と呼ばれる部類の人間の中で、ほんの一握りしか出来ないだろうし、吉良ほど正確に演算出来る人間は一人か二人程度だろう。
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