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そうしている内に先頭を走るノアボックスは高原を抜け、最初にイリーガルが確認されたポイントに到達しようとしていた。
「中央街に向かっていた運搬馬車が消息を絶った場所はこの先なんだね?」
第一班、と文字が塗装されたノアボックスの助手席に座る吉良が、横の運転手の男に笑顔で尋ねる。
「はい。運搬業のローレンスとレーミス両人からの連絡が無くなったのは、ここより西に十キロの地点で間違いないです」
運転手の言葉に、ふむ、と唸った吉良。
「なら大丈夫かな。進路予定は変更せずに、少し速度を高めて走行を続けてよ」
「了解しました。……しかし、吉良上等補佐官の計算力には舌を巻くばかりです」
「ん……ありがとうね」
若干だが苦笑いに近い表情になる吉良。
そんな吉良の様子に気付く筈も無く、運転手は吉良の実績を褒め称える。
褒めても何も出ないんだけどなー、昇級試験で言葉添えなんて通用しないしさぁ。
吉良は運転手の賛辞の言葉を聞き流しながらそんな事を思考するが、何時ものように笑みは決して絶やさなかった。
がたん、と車体が軽く跳ねた。
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