怪物の狂声と人間の恐声

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  「さっさと起きろ、馬鹿共がっ! 目的地に到着したぞっ、何時まで寝てんだっ!!!!」 「うわっ!?」 「ひゃっ!?」 先輩の地鳴りのような怒鳴り声で、飛び起きる空城と鋼ヶ崎。どうやら長い車旅の途中で寝てしまったようだった。 「直ぐに予想ポイントまで徒歩で移動する! 装備を持って早く出ろ! 寝ぼけてんなら、ひっぱたいてでも覚ましてやる!」 怒号に、ぶんぶんと首を横に振る二人。 厳しさと腕力が意志を持ったような先輩の張り手など食らった日には、作戦どころの話では無い。即刻医務室行きだ。 空城が右手首に付けている腕時計を見ると、既に出発から二時間が経過していた。最後に鋼ヶ崎と交わした会話の記憶が無い。 「おら! さっさと出ろ!」 先輩の声に、蹴り飛ばされたように停車したノアボックスから出る二人。 途端に、ひゅるると肌を突き刺すような冷気が襲った。 「うう、寒い。この戦闘服に顔を隠す部分が無いことが恨めしいわ」 眩しいように目を細めて鋼ヶ崎が呟く。 手に持った長身のライフルがカタカタと細かく震えているのは、寒さ故か。 「鋼ヶ崎、ゴーグル付ける時は付属の布を挟んでよ。ヘルメットは今回支給されていないんだから」 眠たげに目をこすりながら注意する空城。その口からは白い吐息が微かに漏れた。
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