朝霧に隠れた狂気の予感

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「ふわぁ、眠むいなあ」 「おいローレンス、しっかりしろ。今日は昼までにこの荷物を届けにゃならんのだ」 延々と伸びる灰色の道。 そこを一台の馬車が、軽やかな蹄の音を響かせて走っていた。幌が掛かった木組みの車体に、二人の鍔広帽を被った男がいる。 車体の後ろには、縄で固定された木箱が大量に積まれており、馬車の振動に合わせてカタカタと震えていた。 「分かってるけんどよう。流石に十日も走りっぱなしはよぅ、眠くなるってもんだぜ? そう思わん、レーミス?」 馬車を牽引する二頭の馬の手綱を握る、ローレンスと呼ばれた、眠たげな若い男が同僚に抗議する。 荷物に背を付けている同僚の若い男は、 「とにかくよ、今日はお前の番なんだからよう、しっかりやれよな。あと少しで街なんだからよ」 キッパリと抗議を切り捨てる。 レーミスと呼ばれた彼は体の前で木製の単発銃を、銃口を上に向けて持っていた。 「……だけど、どうも不気味よな。ここ」 「そうだな。灰色の花……か」 馬車が走る道を埋め尽くすのは、枯れたような灰色の不気味な花だった。
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