怪物の狂声と人間の恐声

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  「全員その場で停止して下さい。十一時の方向、イリーガルを確認しました。距離約三百、数六、他に数体居ると思われます」 ミカルが手振りを交えてそう言ったのは、行進を開始して三十分後の事だった。 ミカルの言われた通りに息を潜めて姿勢を低くする隊員達。その動きを後方から見ていた一台のノアボックスも停車した。 鋭く冷たい北部特有の風が彼らを吹き抜けるように、緊張感が皆に浸透していく。 ――奴ら、まだこっちには気付いていないみたいだな……。風向きが幸いしたのか。 空城は小刻みに波を作り出すゴーグルの倍率を調整しながら、漠然とした安堵感を感じてそんな事を思った。 「動くなよ。吉良上等補佐官の指令はこの状況じゃ無理だからな、俺の合図があるまで絶対に動くな。合図したら、各自射撃開始しろ。訓練と過去の実戦を思い出せ」 森田が微かに聞こえる程度の小声で指示をする。無線機器の無い今、吉良からの指令は不可能だと判断したからだろう。 その言葉で空城の漠然とした安堵感は消え去り、双眸がぎゅっと引き締まった。
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