怪物の狂声と人間の恐声

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――今回も浄化は無理みたいだな。 森田はサングラス越しに、数百メートルほど離れた場所で群れているイリーガルを見て若干嫌そうに思考する。 彼はゴーグルを付けておらず、あまつさえライフルをも装備してはいなかった。腰に剣を申し訳程度に差しているだけである。 そんな無謀以前に自殺志願者ではないのか疑いたくなるような、超軽装備の森田は此方を向いているミカルと手の動きだけで会話を始めた。 ――イリーガルもといキラーグレイは警戒態勢に入っていないぞ。叩くなら今だ。 ――そうですね……。これ以上の時間を費やす必要もありませんし、逆に状況変化の可能性も否定できませんからね。 ――じゃあ、戦闘開始だな。 グッと親指を立てた森田は、皆に微かに聞こえる声で命令する。 射撃開始。と。
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