怪物の狂声と人間の恐声

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「いいな、射撃は絶対に絶やすなよ! 装填のタイミングを各自でズラし、相互で補助して射撃を続けていけっ! 吉良上等補佐官の指示にも迅速に対応しろ! そして絶対に油断と安心はするな、戦場では油断と安心をした奴が死ぬんだからなっ!」 立ち上がり、キラーグレイへと駆ける森田は部下達へ命令のような口調で叫ぶ。 叱咤と発破のようなそれを無言で了解している隊員達は、構えたライフルを発砲しながら徐々に前進していた。 爆発音に似た発砲音と共に、構えられたライフルから銃弾が吐き出され、灰色の草原を、灰色の狼を蹂躙していく。 「右翼は手前のキラーグレイに集中して下さい! 左翼は森田第三班長の支援を宜しくお願いします!」 しっかりとライフルを把持し、精確に弾丸をキラーグレイに叩き込みながらミカルは発砲音に負けない声量で指示をする。 この指示は、吉良からの間接的な命令だ。 その命令でさらに銃撃は激しくなるが、キラーグレイが一気に殲滅される事は無かった。否、まだ最初の一体以外、致命傷さえも負わせられていなかった。
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