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しかし、そんな事が残弾数や精神力から考えて、所詮は机上の空論でしかないことを充分に隊員は承知していた。
だからこそ先手を打ち、速やかにキラーグレイを殲滅する必要がある。持久戦が不利なのは人間達のほうなのだから。
戦況を後方で双眼鏡越しに見ていた吉良は、そんな光のように流れていく思考を打ち止める事なく指示を出した。
停車したノアボックスから吉良の指示を受けた、第一班に所属している男が一人出てくる。先端にカメラのフィルムのような物が付いた短い銃を片手で握っていた。
「頼むよー」
笑顔の吉良の言葉に男は頷いて、手をぴしりと上げて銃を、銃口を空へ向ける。
まるで、徒競走の合図を出すように。
高らかと銃を持つ右腕を掲げた男は、吉良の指示を待たなかった。
北方地区特有の冷たい風が草原を吹き渡り、がさがさと草木が震える。
そして、男は引き金に力を入れた。
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