怪物の狂声と人間の恐声

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【グレミクス=ネクシャン】 その世界の大陸の北方に位置する高原。 そこには巨大な施設があった。 長方形の塔と呼んでも誤りではない白い建造物が、広大な敷地内に一種の森のように乱立して構成されている。 その周りにはぐるりと壁がそそり立つ。 外部との唯一の繋がりは、北部と南部の扉のみでそこだけ壁が途切れていた。 そんな敷地内では、同じような白い制服を来た男女達が行き交っているのが見える。 「ミカル班長、おはよう。今日も見事に霧が凄いな、正にもやもやだ」 「おはようございます、森田班長。そうですね、正にもやもやですね」 「もやもやの部分は触れないでくれよ。自分でも間違えたと思ってたんだからさあ」 敷地内の中庭区域で、偶然行き会った二人の若い男が親しげに挨拶を交わす。 ミカルと呼ばれた若い男は整った優しそうな顔付きをしており、やや癖がついた薄青色の髪と相俟って幸薄そうな印象だ。 森田と呼ばれた二十代半ば程の男は、厳ついサングラスを掛けているが精悍な顔付きだと言うことが分かる。 黒い髪を全て後ろに流していた。
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