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「先生というと、当然」
「ええ。ピアノです。私と彼女はライバルだったのですよ。私は、それまで彼女に対して好意を抱いているとは思っていなかった。ただ、技を競い合う関係、その様に思っていました。だから気になるのだと。今思うと、好意を抱いていたのですけどね。しかし、突然私の身体がこうなってしまいましてね」
私は再び杖を取り上げ、それを二人に示す。
「その時は絶望から、もうピアノを辞めようと思いました。そして、先生にその意志を伝える前に彼女に話したんですよ。私は、もうピアノを辞めようと思うと」
私はそっとメガネに手を触れ、言葉を続ける。
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