楽屋にて

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 彼女はそのままの姿勢で視線だけを時計に送る。文字盤のない時計は六時十五分を差している様に見えた。彼女は次の仕事を思い出し、慌てて着る服を選び始める。 「もう、恵津子は何で呼びに来ないのよ」  彼女はついそんな言葉を口にする。恵津子は光の五歳上の二十二歳と、年上なのだが、光にとって彼女は付き人のような存在となっており、私生活、仕事の両面で彼女がいなければすぐに立ち居かなくなるくらいに依存していた。しかし、光はそのことに気がついていなかった。
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