雑誌記者

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「ええ、色です。あの、光沢のある黒が私の心に焼き付いているのですよ。今でも、ピアノと言えばまずあの色を思い浮かべるくらいですから」  私の言葉に、武藤がなるほど、と同意の言葉を返し、 「それでですね、朝倉さんに話を聞くからにはこの話題を避けることは難しいのですが」と、やや気後れした様な口調で切り出す。 「ああ、このことですね」  私は彼の言葉に対し、右手に立てかけていた杖を持ち上げ、気安く二人に示す。 「はい」  神妙な二人の声に私は、 「別に構いませんよ。もう、慣れましたから」と、笑みを浮かべた。
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