はじまり

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「歩ー!こっちこっち!」  食堂に呼び出された僕は、食堂に足を踏み入れたとたんに、大きな声で名前を呼ばれる。  足元を見ていた視界にはそれと同時に誰かの足が見えて、その足の持ち主を思って嬉しすぎて涙がでそうだった。 「遅いな!お前が来るまでずーっと待ってたんだぞ!」  手加減のない力加減で腕を捕まれて、顔をしかめる。 「離して痛い!」 「ん?なんだって?もっと大きな声で喋らなきゃ、誰も話なんか聞いてくれねーぞ?」 「(言ったって僕の言葉なんか聞かないくせに)」  僕の腕をグイグイ引っ張って、彼の信者、生徒会役員の座るテーブルに彼の隣に着かされて、僕はため息をついた。  周囲からとばされる視線や悪口。それに負けず劣らず嫉妬という視線を僕に向けてくる信者達。  はっきり言ってくだらない。  僕が君たちにいったい何をしたと言うんだ。自分が平凡だというのは十分熟知しているし、転校生を使って学園アイドルの生徒会に近づこうって気は毛頭ない。僕はゲイでもバイでもホモでも腐男子でもない、只のノーマルなんだ。信者達は頭も、顔同様に良いくせに、何で気づかないんだろう?僕が転校生に声をかけられる度、名前を呼ばれる度、あんたたちに会う度に、冷めた視線を向けていることに。  転校生には近づくな、っていうんなら、僕に彼が近づく前にその腕の中に閉じこめてしまえばいい。転校生を邪険にするなというなら、睨んでくんじゃねー。その矛盾した言動にいい加減に気づいて欲しいよガキどもに。  そして周りのガキどもも、そんなにアイドル達が大事なら、僕ばかりを理不尽に狙うのではなく、彼らを誑(タブラ)かしている転校生本人を滅茶苦茶にしてしまえばいいのに。その方法なんていくらでもあるし、僕は喜んで協力する。
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