彼の妹(仮題)

はじまり

　新学期が始まって、一週間目の出来事だった。

　王道学園、全寮制男子校霧ヶ丘学園に、王道転校生がやってきた。

　ぼさぼさの髪の毛に、縁の真っ黒な眼鏡のオタクルックス。オマケにおつむの代わりに腕っ節が無駄に強い、俺様理論を振りかざす宇宙人。

　案内役である腹黒副会長の笑顔に突っ込みを入れて気に入られ、チャラ男庶務には一目惚れされ、双子書記を見分けた上に無口わんこな会計とも友達になる。俺様生徒会長には喧嘩を売ってキスをされ、数々の見事なまでのイベントをクリアした王道転校生――里山戒(ｻﾄﾔﾏｶｲ)――。

　瞬く間に彼の存在は学園中に広まり、生徒会役員の親衛隊とは喧嘩を売り、売られのハチャメチャな日々。

　ピリピリイライラした雰囲気の学園には、最早転校生しか見えていない生徒会役員は何もしようとはしない。

　そして今日も、僕――神崎歩(ｶﾝｻﾞｷｱﾕﾑ)――の学園生活が始まろうとしていた。