求めるモノ、消える自分

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顔を洗い終えたボクは、椅子にかけてあるエプロンを身に付け台所に向かった。 この家のことは全部ボクがやっている。 理由は、ボクの両親は二人とも海外で仕事をしている。 なのでボクは母さんの妹さんである。野宮 愛香(のみや まなか)さんのお家で居候させて貰っているのだ。 そして愛香さんは看護師のナース長を勤めていて。帰ってくるのが遅かったり、帰って来なかったりする時がある。 そのためボクは家事全般を覚え。この家の仕事を任されているワケだ。 ……っと言っても、本当はこうやって家事をするぐらいしかないだけなのだが。 この無表情のせいで、ボクは周りから少し敬遠されている。 無表情なんか気にしない優しい人たちもいるけど。結局はそれだけ。 相手がどんなに優しくても、ボク自身がダメならそれはダメなのだ。 必死に喋ろうとしているのに、言葉が出ない。 頭の中ではこんなにも早く言葉が出てくるのに、いざ本番となり喋ろうとしたらまったく働かなくなる。 いや、働くには働くんだけど。なんていうか、こう、口が上手く動かなくなるのだ。 所謂、上がり症というやつ。悪く言えば、対人恐怖症。 それがボクのもう一つのコンプレックスだ。
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