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私の少し先で起きている「それ」は、果たしてどういった結末なのか。
安易な結果と解ってしまうのが、どことなく悲しい。
腕を引っ張られ、足にしがみつかれる。
バランスを崩した名も知らぬ男は地面に音を立てて転ぶ。
前から倒れた男に、のし掛かる体。体。体。体。体…。
肺を圧迫された男は苦しそうにもがく。
えぐられた首は更に噛みつかれる。
後ろから噛まれた、うなじは無くなり、男のうめき声が乾燥した街に響く。
二の腕を噛まれ、ふくらはぎを噛まれ、横から腹部を噛まれ、暴れる力もなく…ただ男は動かなくなるだけ。
ゴロンと仰向けにされた「肉の塊」は腹部を中心に、どんどん原型をなくしていく。
広がり、飛び散る赤い液体をすすりながら、引っ張りあう腸を口一杯に頬張り、邪魔くさい骨は不細工に外に放り投げられ、奥にある微小ながらに動くヌルヌルした臓物を口に運ぶ。
体の中の匂いに嘔吐感を感じ、耐えきれず私はまた走る。
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