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――それは後輩。
「先輩、今なんて……?」
世界が終わるとでも聞かされたくらいに、驚愕の表情なミルフィ。
「俺にもう一人生徒が増えるという話を聞かされたんだが」
「それは女ですか?胸は大きいですか?私よりも美人ですか?」
「女で胸はメロンばりにでかくてお前よりも美人だったな」
「ど畜生おおお!所詮先輩もそこらの美人に弱い男なんですね!でかい胸が大好きっ子なんですね!」
涙をぶわぁぁと流しながら走り去ろうとしたので、バルドは腕を片手で掴んだ。
「ど畜生ってお前……それにこの話は本人の希望でなくなったぞ?」
「へ?」
「俺が怖いんだと」
「怖い?」
「お前だって知ってるんだろ?俺が母親を……」
無意識に刻印された瞳を撫でる。
「知ってますよ。先輩の魔力があまりに高過ぎて命懸けで産んだんですよね。先輩悪くないです」
「……なんで知っている」
そう言いながら、あの糞親父だろうと内心舌打ちする。けど、その話をしても誰も信じない。この罪人が付けられる刻印と、強過ぎる力のせいで俺を怖がる。
この国で親殺しは例えどんなに正当な理由があろうとも本来なら死罪だから。生まれる前だから、奇跡的に刻印だけで許されただけだ。
「お前は何でそんな笑顔で俺の前にいるんだよ」
「え?」
「俺といたら他の奴らに避けられるだろ?」
「私、先輩怖くないし好きですよ。先輩がいれば別に寂しくもないです」
にっこりと自然にそう言う。嘘をついているなんて思えないその瞳に一瞬言葉を失った。彼女に対して背中を見せるバルド。
「…………俺もお前の事は嫌いじゃない」
そう言い残し、バルドは逃げるようにその場を去った。
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