プロローグ

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崩壊。その言葉がピタリと当て嵌まる。かつては見る者全てが溜め息を漏らす程の優雅で、巨大な石造りの宮殿。 それは今や崩れ落ち、ただの瓦礫と化している。見る者全てを魅了したフラワーガーデンも、花は塵と化し、草木は焼き尽くされ今や荒れ果てた庭でしかない。 荒れ果てた庭の中に、金髪のその女は倒れたままに空を見上げていた。澄み渡る雲一つない快晴の青空。ただぼんやりとした瞳で見上げていた。 人ではない……何故ならその背に純白の翼を生やしている。不自然な程汚れ一つない、神々しささえ思わせる純白の翼。 その翼とは対称的に、その女は朱に染まっていた。それは生命を保つのに必要な朱の液体。止まる事なく流れ出る。だがその翼を汚す事は決してない。 女は生気を失いつつある瞳で、何もせずに空を見上げている。 『汝の願いは何だ?』 女に降り掛かるのは子供にも、大人にも、老人にも、女性にも男性にも聞こえる不思議な声。まるで全てを司るとでも言うかのように…… 『これは我の罪。贖罪として一つ願いを叶えよう』 その問い掛けに反応して、生気を失っていた女の瞳に少しだけ光が戻る。
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