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「贖罪ね……全てを元に戻しても、どうせまた繰り返しなんでしょうね」
姿なき声は何も答えない。ただ女の答えを待っている。
「私の国……いえ、私の大陸をちょうだいな。私は女神となりて、私の子供達を見守りながら生きよう」
『意図が分からぬが……そなたが支配する大陸と、新たな肉体を用意すればよいのか?』
何が可笑しいのか、女その声の言葉を聞いてクスリと笑う。それは実に楽しげに笑う。
「いえ、肉体はいらないわ。だって死ぬのは痛いから、一度だけで充分だもの」
死――それは今彼女に訪れようとしている物。一度目の死。
「支配なんてとんでもない。私は見守るのを楽しむだけ……そう、女神の気まぐれかしら」
彼女は何を願うのか。その表情は女神と称されてもいい程、慈愛に満ちた微笑を浮かべている。
「私が望むのは――」
「汝の願い叶えよう。今はただ安らかに眠るがよい」
その日地上に新たな大陸が生まれた。それは女神の気まぐれと言う名の大陸。
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