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――それは最初の授業。
「おりゃあ!セイセイセイ!ふりゅらぁぁあああ!」
額に汗をし、箒に跨がるミルフィが必死の形相をしている。
「ハアハア……ゼイゼイ……なかなか頑固ですねこの箒」
「…………何をしている?」
力を尽くした感全開のミルフィに、バルドは目を細めて顔をひきつらせた。
「そ……そんな不審者を見るような瞳は止めて下さい!傷付きます!乙女の心は飴細工の如く繊細なんですよ!?」
「……善処しよう。で?何をしている?」
そんなミルフィに向かってバルドは冷たく言い放つ。
「お前はふざけているのか?お遊戯なら他所でやれ」
「相変わらず失礼な!」
憤慨しながら放棄を振り回すミルフィだが、バルドは軽々と避けていく。避けながら箒を軽く片手で掴み呪文を口にすると、箒は回転しながら空に舞い上がり、ミルフィが届かない位置でピタリと固定されて浮いた。
「お前さ。箒で飛ぶなんて、七歳程度でも出来るぞ」
「わっ、私の魔術の才能のなさを舐めないで下さい」
「いや……まあ、いいが。お前どうやってこの学園に入れたんだ?この大陸じゃあ、最高レベルの学園だからこれくらい出来て当然のはずだろ?」
その言葉にミルフィは黙り込む。そんな彼女の姿に舌打ちをしたバルドは、箒を掴み跨がった。
「後ろに乗れ」
「はい?」
「二度は言わない」
「わわわ!乗ります乗らせて下さい!」
すでに足が地面から離れていたバルドを見て慌てるミルフィ。バルドに飛び付くように突撃した。
「才能がないやつは考えても意味がねぇ。体に覚えさせてやるよ」
「……相変わらずイヤらしい先輩です」
顔をしかめたままバルドは空に向かい飛び上がると、風が二人を迎えてくれた。空が近くなり、地面が遠くなる単純な奇跡。落ちないように彼女は力いっぱい彼に掴まる。腰に回された手の感触に彼は思う。
(あんなに嫌がってたはずなのに……何をやってんだろな、俺は……)
そう思いながら糞親父以外の誰かといるのは久しぶりだと気付き、なんとも言えない感情が沸き上がり、スピードを上げた。
「しょえ―ー!!待って下さい!先輩!私初めてなんですからもっと優しくして下さいぃぃぃ!!」
「喧しい!誤解されるような台詞を吐くな!」
轟く悲鳴と罵声。
二人が目指した空は青かった。
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