18人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゴメンね海…」
確かにそう聞こえた
「何で俺の名前を…」
振り返えると
女は柵に手をかけ
両手を広げて
高い崖から、宙にその身を投げ出した
その時
雨の一滴…一滴が
瞳にはスローモーションになった様に映った
しばらくの空白の時間が流れた
静寂の中で雨音だけが
続いている
俺は柵に手をかけて急いで下を見るも
赤い血が花の様にアスファルトに広がり
雨は女の体に容赦なく降り続けていた
もう彼女を縛る星の重力も、世間も家柄も
全ての歪んだ鎖から解放されたのだ
なのに…なのに
また絶望した
心は奈落の底にあるのに、さらに絶望に重ねる。その色は黒色。果てない闇の中にある。
ああ…
雨も風も空も
都会も…
そして海も月も陸も…
俺は一人じゃないと…言ってくれ…!!!
最初のコメントを投稿しよう!