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「君たち、そんなところで何をしてるんだ!」
大声で叫んだのは、詰め襟の学生服を着込んだ小柄な男子生徒だった。
右腕に巻いた「週番」の腕章が、まるで生まれた時から身体の一部であるかのように真面目そうな少年だ。
「あぁ~ん?」
校舎の中庭にしゃがみこんで談笑していた別の男子生徒たち三名が、顔を上げうろんそうに少年を睨みつけた。
「何だ、生徒会の岡崎かよ……うぜーな、さっさと行っちまえよ」
「そういうわけにはいかないよ。今、何時だと思ってるんだい?」
岡崎と呼ばれた少年は、左手に巻いた腕時計の文字盤を突き出していった。
時刻は、既に七時を回っている。
四月も半ばを過ぎて日も延びたとはいえ、もう外はすっかり暗くなっていた。
「校則で定められた下校時刻は午後六時。もう一時間も過ぎてるのに、君らはそんな所で何をやっているんだい!?」
「ったく、鬱陶しいヤローだよなぁ……」
三人の男子生徒はのっそりと立ち上がり、岡崎を取り囲むように詰め寄った。
「俺たちゃここの生徒だぜ? 何時まで居残ろうが勝手だろーが。アァン?」
「週番だからってエラそうにしてんじゃねーよ」
「ヤキ入れてほしーのか?」
肩を小突かれ、口々に恫喝された岡崎が、さすがに怖じ気づいたように校舎の壁際まで後ずさる。
細い目を見開き、恐怖に駆られたように叫び始めた。
「ひっ!? ひぃいい~っ!!」
「おいおい、なにビビってんだぁ?」
「ったく、ひとを幽霊か何かみてえに――」
そういいながら、何となく背後を見やった三人組の一人が、ふいに口をつぐんで仲間の肩をせわしなく叩いた。
「どうした、佐藤?」
「先公でも来たかよ?」
仲間の異変を不審に思った二人が、背後を振り向き――そして立ちすくんだ。
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