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「あのー、『マジック研究会』の野外ステージ会場って、こちらでしたっけ?」
「え? ああ、そうだけど――」
あいにく本日の公演は終了――といいかけた爽人の言葉をみなまで聞かず、少女はクルリと振り返って声を張り上げた。
「やったー! ここよここ! ほらーミドリぃ! 早く来なさいってばぁ!」
友人を手招きするようにパタパタ手を振る。
間もなく、校庭の方から同じ一年の女子生徒が遠慮がちに近づいてきた。
ストレートの黒髪を長く垂らした、おとなしそうな少女である。
先に現れた友人に比べるとずいぶん落ち着いた雰囲気なので、同学年のはずなのに姉と妹のような印象を与える。
色白のほっそりした顔立ちは美しく、高校の制服より和服の方が似合いそうだ。
「ごめんなさい、燈(あかり)ちゃん。私、何だかまだ決心がつかなくて……」
「いいよ、いいよ。今から始まるとこみたいだしー」
そういうと再び爽人の方に向き直り、
「先輩、研究会の人でしょ? マジックとかやるんですよねー? 見せて、見せて!」
(何とまあ、落ち着きのない……)
とはいえ、リクエストを受けて応じられないようではマジシャンがすたる。
「ほんじゃま、挨拶代わりに軽いネタから……」
さきほど野球部の面々に不評を買ったピンポン玉のマジックを、もう一度同じ手順で繰り返す。
爽人の手の中で一個づつ増えていく玉を見るなり、燈と呼ばれた少女の瞳がキラキラ輝き始めた。
「うわーっ凄い! ホントに増えてるぅ! ね、ね、どーなってるの? まさか本物の超能力!?」
まるで生まれて初めて手品を見た幼児のごとく、口許に両拳を当ててはしゃいでいる。
これだけウケると、爽人としても悪い気はしない。
「ふっふっふ、判るかね? 何を隠そう、念力を使って四次元空間から取り出してるのさ」
もちろんジョークである。
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