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だが、燈は急に腕組みすると、大まじめな顔でブツブツつぶやき始めた。
「なるほど、念力かあ……あたしにもできるかなぁ?」
(あたしにも?)
怪訝に思った爽人は、いったん演技の手を止めた。
「あの、君らは……?」
それを聞くなり、少女は待ってましたとばかり手を挙げた。
「はーい! あたし、一年A組の穂室燈(ほむろ・あかり)! で、こっちが友達の深海碧(ふかみ・みどり)ちゃん! よろしくぅ♪」
「あ……よろしくお願いします」
「碧」と紹介された長い髪の女生徒が、行儀良くお辞儀する。
(ん? フカミ……?)
微かに引っ掛かるものを覚えた爽人だが、すぐに気を取り直して尋ねた。
「よろしく……ってことは、君らひょっとして」
「はいはーい! 入部希望者でぇーす!」
願ってもない女子部員の加入――しかも二名。
「本当に? いやー、そりゃ助かる!」
嬉々として叫んだ拍子につい手元が狂い、手の中に握り込んだピンポン玉――実は半分に切ったものを重ねていたのだ――がポトポト地面に落ちた。
「え? あああ~っ! 何よこれ、インチキじゃない~っ!?」
地面に散らかった「タネ」を見るなり、燈が顔を真っ赤にして怒り出した。
どうやら、爽人の言葉をストレートに信じ込んでいたらしい。
「いやその、インチキって……これマジックなんだけど」
困ったように説明する爽人だが、燈は納得がいかないのか膨れっ面で睨みつけている。
その時、おもむろにしゃがみこんだ碧が、タネを拾い集めて爽人に差し出した。
「『シカゴの四つ玉』――クロースアップ・マジックの古典ですね。指先のテクニックが難しいので、最近は演じる人が減っているそうですけど……」
「おっ? 君、なかなか詳しいね。もしかして経験者?」
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