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幼い夢。
世界は何処までも普遍的で、それこそ突然異世界に呼び出されたり、魔法使いが現れて世界を救いましょうとかトチ狂った事もほざかない、平和で穏やかな、言い換えれば変化のない世界。
それでも文句はなかった。
友達と遊んで、ちょっと帰るのが遅れて父に怒られて。その様子をみた 弟が笑い、姉がそれをたしなめる。そして母が用意した晩御飯で説教は終わり。
そんな当たり障りのない日常にも満足していたし、下手に殺人事件とかに関わるよりはこっちの方が何倍もマシだと思っていた。
でも―――
―――気付いたんだ。
何回もそんな日常を繰り返した内に、気付いた。
世界はいつでも変化している、とどっかの偉人さんか誰かが言ったらしいが、そんなのは第三者から見た視点だと言うことに。
充実してなかった訳もなく、程よく平和な日常には満足していた。それでも気が付いてしまったらもう止められなくて。
変化が欲しかった。
自分が変わるんじゃなく、世界を変えたかった。
こんなありきたりな日常よりも、もっと面白い視点から見てみたかった。
そして、世界は一転した。
一面に広がる赤。鮮やかに舞い散った紅。見えるもの全てが朱。ともすれば瞳が染まってしまったと思うほどの、赤。
そんな朱い空間の中、目を下ろせば手に握られた子供用のカッターナイフが赤い視界の中、尚も一際朱くて、もう一度目をあげれば、目の前にあった赤い教壇と黒板がここが教室であることを思い出させる。
自分は変わりたくなかった。
家族と暮らす毎日は笑っていたし、友人と遊ぶ毎日は楽しかったから、自分が変わればそれすらなくなると理解していた。
だから、なら周りが変われば良いって思ったんだ。
ガキ臭い思考で必至に考えて、結局自分が変われないなら世界が変われ、と。けれど幾らまてど世界は変わらず――――――結局、相も変わらぬ普遍な日常。
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