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彼女がそうしていたのは、時間にして10分程だった。
泣き叫ぶ声は止み、啜り泣きに変わってゆく。
そうして彼女はゆっくりと伏せっていた身体を起こした。
「とにかく、こっちに座って」
顔は上げなかった。こちらに目を向けることもない。
しかし彼女は言うことを聞き、あたしが促す通りに椅子に腰かけた。
彼女から離れ、部屋の隅に歩いた。シンクの脇にポットとティーパックがある。
マグカップに紅茶のティーパックを入れ、お湯を注いだ。
それを手に再び彼女のそばにいくと、テーブルの上にコトリと置いた。
俯いていた顔が、わずかに上がる。
彼女はカップを見ていた。
湯気が立ち上るカップからは、紅茶の優しい香りが溢れ出す。
「どうぞ」
「……………」
彼女は何も答えなかった。
しかしもう泣いている様子はない。
あたしは彼女に問いかけた。
「落ち着いたかな?」
「……………」
「聞いてもいい?」
「……………」
「私のせいって言うのは───…」
「別れるって言われたの」
「え?」
彼女は顔を上げた。
しかしまだ目線は俯いたままだ。
目を合わせることなく、彼女は続ける。
「カレシに、別れるって……言われた」
「………………」
「……おまえはオレを好きじゃないんだって」
「……どういうこと?」
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