プロローグ

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彼の部屋のベッドの端に座ったまま、あたしはその体を拒否するように俯いた。 首を横に2度振る。 「ごめん……」そう呟いたのは佐倉俊輔の方だった。 「ごめんね」 あたしも続けるように言った。 俊輔は立ち上がり、頭を無造作に掻く。セットされていた少し長めの髪がクシャクシャと乱れた。 「ごめんな。……そうだったよな。式挙げるまでは……結婚するまではナシって約束だったよな」 「……ごめんね」 「いいよ。悪かった」 俊輔は優しく微笑んだ。 2才年上の彼は、いつも暖かくあたしを見てくれて、あたしの意見を尊重してくれる。 「……愛里、腹減んない?」 「えっ?」 ネクタイを緩めながら、俊輔が言った。 「あ、じゃあ何か作るよ。あたし」 「いいって。出前にしよう」 「でも……」 「オマエも疲れてるだろ?まだ慣れない仕事なんだから」 「……………」 「オレといるときくらい、楽にしてろって。……な?」 またしても、優しい笑顔がそこにあった。
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