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俊輔のマンションは利根川のすぐ傍だった。
ベランダからはその川の流れがよく見える。
寝室はもう暗い。部屋のダブルベッドは、出窓のすぐ脇にある。
明かりを消した部屋で、彼は隣で寝息をたて始めた。
約束通り、あたしを抱くことなく眠りに就くその姿を見て、愛しさと申し訳なさを同時に感じた。
彼の静かな寝息が、強い鼾に変わる。
───疲れてるんだな……俊輔も…。
あたしは視線を上げてカーテンの隙間から夜空を見上げた。
見えたのは月。
欠けた月。
……でもそれが、上弦の月なのか下弦の月なのか分からなかった。
満ちてゆくものなのか……
欠けてゆくものなのか……
分からないそれを
ただジッと見続けた。
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