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ごく普通の月曜日だった。
1限目のチャイムがなると、校舎内は僅かな声を残して静まり返る。
教室とは少し離れた保健室は、さらに音を無くした。
そんな静けさを破るように、1人の女子生徒が保健室に飛び込んできた。
渡辺千尋だった。
「センセーのバカっっ!」
彼女はそう叫ぶと、大声をあげて泣き出した。
「えっ……渡辺さん……?」
パソコンに向かっていたあたしは立ち上がり、床に座り込んだ彼女に近付き背中に手を乗せた。
「ど、どうしたの?授業は?」
「愛里センセーのせいだからねっ!」
「えっ?」
それから彼女は口を閉ざし、しばらくの間泣き続けた。
鞄はそばに落ちている。
教室に行かずに、ここへ真っ直ぐ来たのだろうか。
まったく訳がわからない。
「なにがあったの?」と、問いかけても、彼女は答えず泣き声を荒げるだけだった。
そんな彼女を見ながら、あたしはひとつの言葉を思い出した。
『あんた1つ間違ってるよ』
『さっきの女、そのうち泣きながら来るんじゃない?』
そう言ったのは、小林大地だ。
なぜ彼はそんなことを。
しかし、彼の言ったことが、今目の前にある。
あたしは泣き止まない彼女の背中に手を添えながら、自分のした間違いとはなんだろうと、焦る気持ちで考えていた。
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