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今のぼってきた道は、ゆるやかな丘の斜面をくだって、小さなかわいらしい家々のあいだを通り、畑を貫いて、そのまま街道までつづいています。
平野の遠くに、薄くかすむ、水色に見える山々。
それを視線でなぞって、空に溶け込むぎりぎりで、海が目にはいりました。
『…青い…』
青年の口から、惚けたような呟きがもれます。
『すごいなぁ…海が真っ青だ!』
次いで、喜びの声音で叫び、青年は空を見あげました。
『空と同じ色だ…』
感慨深そうなその言葉は、海から吹く潮風にはこばれて、背後の空へ吸い込まれてしまいました。
『…あ』
青年は、丘の上にぽつんと建つ、その小さな建物に、気がつきました。
『あれが…夕日ヶ丘のカフェ』
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