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『宿でお昼を食べたら、すっかり暇を持て余してしまいまして…』
青年は決まり悪そうに笑って、カウンターの席にすわりました。
『なるほど。確かに、何もない街ですから、時間をつぶすのは大変ですね』
マスターは苦笑しながら、カウンターの中で、何かの準備を始めました。
『まぁ。でも僕は、人から聞いて、このカフェにきてみたかったんです』
青年は、嬉しそうに笑いました。
『念願、叶いました』
マスターは意外そうな顔で言います。
『まだ昼間ですよ』
この丘にくるなら、夕日が目当てではないのか、というのが、マスターの考えです。
『いえ』
しかし青年はそれを否定しました。
『昼間が…とくに今日のような晴天の昼下りがいい、と薦められたので』
『奇特な人だ』
そう言いながら、マスターはカウンターに、カップをさしだしました。
中には、ひんやりとよく冷えた、美味しそうなアイスティーが、はいっています。
『え』
驚く青年に、マスターは笑って言いました。
『喉が渇いたでしょう。この天気で、昼間にあの坂をのぼってきたなら』
ちょうど、飲み物を頼もうか迷っていた青年は、喜んでそれを受け取りました。
『ありがとうございます』
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