18人が本棚に入れています
本棚に追加
アイスティーを口に含むと、染みるように、口から喉へと、その味が広がります。
自覚するよりずっと、喉が渇いていたんだな、と青年は感じました。
カフェのカウンターにあるひさしが、眩しい昼間の日差しを遮り、海から優しい潮風が吹きぬけます。
『前も後ろも、右も左も、見わたす限り空の蒼…』
青年が呟きました。
『…青々としげる平野の作物は、風にゆれて海のように波打って』
青年が話している言葉は、彼にここを薦めた人の言葉でした。
『遠くに、空と溶けあうような、水色の山脈と…反対側にある海は、どこまでも群青…』
マスターは口を挟まず、黙って聞いていました。
『…そう聞かされていました。憧れてやまなかった…』
青年が何故か切なそうで、マスターは質問してみました。
『どちらから、いらっしゃいましたか』
『あ、僕は…南の国から』
『なるほど』
マスターが納得すると、青年は沈んだようすで、言いました。
『僕の国には、こんな風景はないから…最初は想像もできませんでした』
最初のコメントを投稿しよう!