プロローグ

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「この村も獣人族に襲われたか」 マスクを被った1人の旅人が、破壊された村の家々を見ながら呟いていた。 まだ、襲われて日が経っていないのか、逃げ遅れたらしい人々の死体が目に映る。 旅人は、ゆっくりと慎重に村の中央へ進んで行った。 「こ、これは……」 村の中央付近にある広場に出た旅人は、思わず目を逸らそうとした。 恐怖のあまり目を見開き、そのまま逃げ遅れたのだろう。 背中からバッサリと両断された村人が息絶えていた。 「この傷跡はオーク族だな」 広場中で逃げ遅れた村人達が、後ろから両断されている。 これでは生きている者も皆無かもしれない。 旅人は何度も獣人族に滅ぼされた村を見て来た。 その経験から、この村にも生存者は居ないと確信していたのだ。 「何とも酷い事をする。この村人にも明るい未来があっただろうに……」 女や子供、若者から年寄りまで、目に映る者全てを殺していったのだ。 獣人族に情けなどない。 それ故に、弱い人々は簡単に殺されてしまうのだ。 旅人は松明を取り出すと、その先端に火を着けた。 「安らかに眠れ」 投げ捨てた松明は、この村を焼き尽くしていった。
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