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玄関で靴を履き、扉を押し開ける。
するとそこには、ドアベルを鳴らした一人の少女が立っていた。
まず目に入る印象的な金髪。つい最近まで二つに結っていたが、今では結ぶことなく肩甲骨の下辺りまで届く長い髪をそのままにしている。
そして碧い瞳。今は亡き母親がイギリス人で、金髪と共に母親からの遺伝したらしい。
常に気高く、十人に聞けば十人が美人だと答える美貌に、自信に満ち溢れた笑みを浮かべた彼女は、腕組みをしながら口を開いた。
「おはようございますわ、真」
「おはよう、玖遠」
彼女の名前は天院寺玖遠(テンインジクオン)。世界有数の天院寺財閥の当主の一人娘にして、僕の最愛の恋人だ。
「時間ピッタリだね」
「当たり前ですわ。私が遅刻などという失態を犯すはずがありませんわ」
自信満々に玖遠は胸に手を当てながら応える。
玖遠の自信満々な態度は近くにいる人に不快感を与えず、逆に安心感を与えるような、不思議な空気を作り出す。
きっとそんなところも、僕が彼女に惚れた理由の一つなのだろう。
「それじゃあ行きますわよ。今日という時間は限られてるんですから」
「うん、そうだね」
そう相槌を打ちながら手を握ると顔を赤くする玖遠を見て、僕は微笑みながら彼女が乗ってきたリムジンへと足を向けた。
こうして、少し変わり始めた日常の中の、幸せな日々が始まりを告げる。
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