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玖遠に促されるままに紅茶を一口飲もうとする。
しかし、それは玖遠が僕の頬に両手を添えることで阻止されてしまった。
「玖遠……?」
「紅茶を飲む前に少しだけ……甘えさせていただきますわ」
そう囁くような言葉と共に、近付いてくる玖遠の甘える猫のような表情。
こうして近くで見ると、テレビに出ているどんなアイドルよりも綺麗で可愛らしい顔を再認識する。
長いまつ毛も、透き通るような碧い眼も、真っ直ぐに伸びたサラサラな金髪も、そして柔らかそうな紅い唇も、全て僕の腕の届く場所にある。
気が付けば、僕も玖遠の背中に腕を回していた。
スッと閉じられる瞳と、少し突き出される唇。
何も言うことはない。
僕もゆっくりと彼女に唇を寄せ、そして口付けをした。
「……んっ……」
鼻から抜けるような玖遠の声。
少し口を開き、お互いの舌を絡めると、仄かに甘い玖遠の味が……って、え?
「……はぁ、真……?」
口を離すと、玖遠は蕩けるような甘えた声で僕の名前を呼んでくる。
「玖遠……今……」
「何なんですの……?」
「味がしたんだ……!!」
「……え……!?」
本当に僅かではあるが、確かに味がした。
「し、真……!!」
ほんの少しだけ、再び未来が見えた気がした。
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