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人は信じるものを失った時、悪に染まるのだろうか。
善悪の天秤は一気に傾き、二度と戻ることもなく、神さえも葬り去る。
想いのすべてを殺し、純潔のユリを赤く染め上げる。
その深き悲しみを癒すものもいないままに失望が拡がり、この世の何もかもを憎む。
徐々にあらわにする歪みに気付くこともなく、暗黒の海に一歩一歩踏み込み、溺れてゆく。
静かに、そして確実に。
オリフラムはそうして少しづつ狂気を帯びていった。
手折られてしまった花の前で、すべてに絶望した心。
その腕に抱きしめた身体。
誰よりも愛しく、誰よりも純潔なその人。
だからオリフラムも人間と言うものを愛することが出来た。
人間が持つ美しく部分の象徴だったからだ。
彼女が信じさせてくれた。
人間は確かに愚かだが美しくもあると。
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