‡1.始まりの悲劇‡

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 人は信じるものを失った時、悪に染まるのだろうか。  善悪の天秤は一気に傾き、二度と戻ることもなく、神さえも葬り去る。  想いのすべてを殺し、純潔のユリを赤く染め上げる。  その深き悲しみを癒すものもいないままに失望が拡がり、この世の何もかもを憎む。  徐々にあらわにする歪みに気付くこともなく、暗黒の海に一歩一歩踏み込み、溺れてゆく。  静かに、そして確実に。  オリフラムはそうして少しづつ狂気を帯びていった。  手折られてしまった花の前で、すべてに絶望した心。  その腕に抱きしめた身体。  誰よりも愛しく、誰よりも純潔なその人。  だからオリフラムも人間と言うものを愛することが出来た。  人間が持つ美しく部分の象徴だったからだ。  彼女が信じさせてくれた。  人間は確かに愚かだが美しくもあると。
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