‡1.始まりの悲劇‡

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 人は未熟で愚かな存在だけれど、愛すべきものだと。  そう言って慈悲深い聖母のように微笑みを湛えていたテレシアは、確かにこの世の何よりも美麗だった。  心の底から人を愛しく想っていたテレシアの言葉だからこそ、オリフラムも素直に信じられたのかもしれない。  そして、花を愛でることがとても好きだった彼女。  決して華やかではない、野花たちさえも同様に愛しいと言った彼女。  懸命に生きる美しさがあるのだと。  命に重さの違いはないと言い切ったテレシアは強い眼をしていた。  そんなことを想い出していた。  体温を無くした姿さえも変わらずに美しいと、そんなどうでもいい事を考えていた。  思考は上手く働いてはくれない。  何故そこに彼女は横たわっているのか、それすら理解出来ない。  判っているのに受け入れたくないと心が叫び続けていた。
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