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日向はあれからずっと山南の部屋にいた。
「日向ちゃん…。」
声を掛けられ振り返るとそこには苦笑いを浮かべた井上がいた。
「源さん…」
昼間から何も口にしていない日向を心配して井上が声を掛けた。本来なら女中として、食事の支度などやらなくてはならないことがたくさんある。しかし、それを井上が何も言わずに引き継いでくれていた。しかし、日向は何もする気にならなかった。
今思えば山南は病に掛っていたのかもしれない。日向のいた時代では現代病だとされていたあの病。「うつ病」に。
山南は浮き沈みが激しく優しく楽しそうに話をすることもあったがそれと同時に落ち込んでいたことも多々あった。そして何より引き籠り。部屋からは厠以外は一切出ようとしなかった。
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