一章

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「…………」 「さあ、沢山食べてね終夜。今日は御馳走よ。氷劉ちゃんも沢山食べてね」 「ありがとうございます、お母様」 「そうだぞ、沢山食べなさい」 「…………」 「……なんで俺の時だけ反応ないの? ねえ氷劉ちゃん? ねえ……」 ──現在、終夜たち四人は食卓を囲んでいる。 テーブルの上には彩りみどりの料理が並び、器がテーブルからはみ出しているくらいだ。 「……。なあ、少し多すぎじゃないか?」 終夜が呆れた表情をしながら女性に問うと、彼女は「そう?」と首を傾げる。 「一応、氷劉ちゃんの分も考えて作ったんだけど」 「いや、それでもこれは……」 さすがに多すぎる気がする、と内心思う終夜。 「まあいいじゃない、余ったら彼が全部食べてくれるらしいから」 真っ先に食事に手を付けようとしている男性に、女は満面の笑みを見せる。 「……俺が食べるの?」 「あら、他に誰がいるのかしら? まさかとは思うけど……私や氷劉ちゃんとか言う気じゃないわよね?」 にっこりと笑みを浮かべ、逆らい難い雰囲気をさらけ出しながら男性を威圧する女性。 「いや、あの……」 「んー? どうなのかしら?」 「食べさせて頂きます」 終夜は料理を食べながら、女性に言いくるめられている男性を無表情で見ていた。 「ふふふ」 「……。いつになく嬉しそうだな、氷劉」 彼の隣の椅子の上では、小さな皿に乗っている料理を頬張っている氷劉の姿が。 「それはそうですよ。久々に、マスター以外が作ったまともな手料理を食べられるんですからね」 「……。そうか、それは良かったな」 終夜は幸せそうに料理を食べる氷劉を見て、軽く微笑んだ。  
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