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「…………」
「さあ、沢山食べてね終夜。今日は御馳走よ。氷劉ちゃんも沢山食べてね」
「ありがとうございます、お母様」
「そうだぞ、沢山食べなさい」
「…………」
「……なんで俺の時だけ反応ないの? ねえ氷劉ちゃん? ねえ……」
──現在、終夜たち四人は食卓を囲んでいる。
テーブルの上には彩りみどりの料理が並び、器がテーブルからはみ出しているくらいだ。
「……。なあ、少し多すぎじゃないか?」
終夜が呆れた表情をしながら女性に問うと、彼女は「そう?」と首を傾げる。
「一応、氷劉ちゃんの分も考えて作ったんだけど」
「いや、それでもこれは……」
さすがに多すぎる気がする、と内心思う終夜。
「まあいいじゃない、余ったら彼が全部食べてくれるらしいから」
真っ先に食事に手を付けようとしている男性に、女は満面の笑みを見せる。
「……俺が食べるの?」
「あら、他に誰がいるのかしら? まさかとは思うけど……私や氷劉ちゃんとか言う気じゃないわよね?」
にっこりと笑みを浮かべ、逆らい難い雰囲気をさらけ出しながら男性を威圧する女性。
「いや、あの……」
「んー? どうなのかしら?」
「食べさせて頂きます」
終夜は料理を食べながら、女性に言いくるめられている男性を無表情で見ていた。
「ふふふ」
「……。いつになく嬉しそうだな、氷劉」
彼の隣の椅子の上では、小さな皿に乗っている料理を頬張っている氷劉の姿が。
「それはそうですよ。久々に、マスター以外が作ったまともな手料理を食べられるんですからね」
「……。そうか、それは良かったな」
終夜は幸せそうに料理を食べる氷劉を見て、軽く微笑んだ。
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