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「なあ終夜、お前、またすぐ旅に出るのか?」
男が料理を口に運びながら終夜に聞く。
「いや、もう旅には出ないつもりだ。大戦も終わったことだしな」
終夜は料理を運ぶ手を止め、父親の方を向き答える。
「ならこれからどうするの?」
「……、まだ考えていない。これといってやりたい事もないしな……」
女性の問いに、彼は少し考えるそぶりをする。
「マスター、暇人ですね」
「……お前もだろうが」
氷劉の皿に乗っていた唐揚げを一つ取り、終夜はヒョイッと口に入れた。
「あっ! 私の唐揚げ! 酷いですよマスター!」
「生意気な事を言ったお前が悪い」
「マスターの鬼ぃ……うぅ、私の唐揚げが」
余程ショックだったのか、氷劉はもう唐揚げがない自分の皿を見ながら、目に涙を浮かべる。蛇が泣く姿は見ていて妙な気分になる。
「泣くほどの事じゃないだろ。ほら、俺の分をやる。だから泣くな、うざったい」
ひょい、と自分の皿から唐揚げを取り、彼はは氷劉の皿の上にそれを置いた。
「──! 唐揚げ!」
すると、氷劉はすぐさま置かれた唐揚げに食いついた。
「…………」
こいつ、こんなに唐揚げ好きだったのか? と、終夜は嬉しそうに唐揚げを食べる氷劉を見て、ため息混じりに呆れた表情を浮かべた。
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