一章

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「なあ終夜、お前、またすぐ旅に出るのか?」 男が料理を口に運びながら終夜に聞く。 「いや、もう旅には出ないつもりだ。大戦も終わったことだしな」 終夜は料理を運ぶ手を止め、父親の方を向き答える。 「ならこれからどうするの?」 「……、まだ考えていない。これといってやりたい事もないしな……」 女性の問いに、彼は少し考えるそぶりをする。 「マスター、暇人ですね」 「……お前もだろうが」 氷劉の皿に乗っていた唐揚げを一つ取り、終夜はヒョイッと口に入れた。 「あっ! 私の唐揚げ! 酷いですよマスター!」 「生意気な事を言ったお前が悪い」 「マスターの鬼ぃ……うぅ、私の唐揚げが」 余程ショックだったのか、氷劉はもう唐揚げがない自分の皿を見ながら、目に涙を浮かべる。蛇が泣く姿は見ていて妙な気分になる。 「泣くほどの事じゃないだろ。ほら、俺の分をやる。だから泣くな、うざったい」 ひょい、と自分の皿から唐揚げを取り、彼はは氷劉の皿の上にそれを置いた。 「──! 唐揚げ!」 すると、氷劉はすぐさま置かれた唐揚げに食いついた。 「…………」 こいつ、こんなに唐揚げ好きだったのか? と、終夜は嬉しそうに唐揚げを食べる氷劉を見て、ため息混じりに呆れた表情を浮かべた。  
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