二章

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(マスター。後ろです後ろ) 「判ってる」 (あ、次は上ですよ) 「判ってるから、お前は少し静かにしてろ」 終夜は飛んで来る矢を刀で叩き落としながら、ゆっくりとした足取りで校舎を進んでいた。 矢は四方八方から終夜を襲う。 「……。なぜ校舎の壁から矢が出て来る」 しかも天井からも。 「……。おい氷劉、この学園はどうなっている? 毎回こんななのか?」 (私が知る訳ないじゃないですか!) 「ああ、それもそうか」 (止まったらダメですよマスター。 次は上と後ろからです) 「……。なんか段々苛々してきた。この校舎、壊しても良いかな?」 (ダメです。そんな事したら近くの住人に迷惑ですよ) 「壊す事は否定しないんだな」 それにしても──本気でいらついてきた。 終夜は矢を避ける度に、表情がどんどん険しくなっていく。 「面倒だ……帰ろうかな」 (マスター。あそこの扉を見て下さい) 「ん」 氷劉の台詞を聞き、終夜は矢が飛び交う廊下の先に一際大きい扉を見つけた。 (多分、あれが学園長の部屋だと思います) 「……みたいだな」 終夜は扉に向かい、猛スピードで駆け出す。 余りの速さで動く終夜に、飛び交う矢は掠りもしない。 そして終夜は扉の前に着いた。 ……。疲れた。あれは体力よりも精神にくるな。 ──さて、この部屋が学園長の部屋で間違いなさそうだな。 終夜の視線の先には、学園長室と書かれている小さな板がぶら下がっていた。  
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