8169人が本棚に入れています
本棚に追加
/490ページ
(マスター。後ろです後ろ)
「判ってる」
(あ、次は上ですよ)
「判ってるから、お前は少し静かにしてろ」
終夜は飛んで来る矢を刀で叩き落としながら、ゆっくりとした足取りで校舎を進んでいた。
矢は四方八方から終夜を襲う。
「……。なぜ校舎の壁から矢が出て来る」
しかも天井からも。
「……。おい氷劉、この学園はどうなっている? 毎回こんななのか?」
(私が知る訳ないじゃないですか!)
「ああ、それもそうか」
(止まったらダメですよマスター。 次は上と後ろからです)
「……。なんか段々苛々してきた。この校舎、壊しても良いかな?」
(ダメです。そんな事したら近くの住人に迷惑ですよ)
「壊す事は否定しないんだな」
それにしても──本気でいらついてきた。
終夜は矢を避ける度に、表情がどんどん険しくなっていく。
「面倒だ……帰ろうかな」
(マスター。あそこの扉を見て下さい)
「ん」
氷劉の台詞を聞き、終夜は矢が飛び交う廊下の先に一際大きい扉を見つけた。
(多分、あれが学園長の部屋だと思います)
「……みたいだな」
終夜は扉に向かい、猛スピードで駆け出す。
余りの速さで動く終夜に、飛び交う矢は掠りもしない。
そして終夜は扉の前に着いた。
……。疲れた。あれは体力よりも精神にくるな。
──さて、この部屋が学園長の部屋で間違いなさそうだな。
終夜の視線の先には、学園長室と書かれている小さな板がぶら下がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!