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「……」
「……」
「ヤッホー」
扉の先には一人の男性がいた。
男は何故か、どこの学校にでもあるような、普通のパイプ椅子に座っており、彼の前には手鏡程の大きさの鏡が宙に浮いていた。
「誰ですか? このいかにも詐欺師の様な顔をした人」
「どんな顔だい、それ」
氷劉の場違いな発言に、男は思わず突っ込みをいれる。
「──さて、良く来たね。白銀終夜君。僕がこのシルフォード学園の学園長をしている神藤だよ」
男──神藤は椅子から立ち上がり、終夜に手を差し延べた。
「……。白銀だ。好きな様に呼んでくれて構わない」
終夜は差し延ばされた手を握る。
「ふふ。あいつの言った通り、目上の人を一切敬わないというのは、本当だったんだね」
あいつ……。親父のことか。
「一切と言うのは少し違う。相手によっては態度は変える」
「つまり、僕はその対象じゃないんだね」
終夜から手を離すと、神藤はほくそ笑む。
「こんな出迎えをする奴を、敬う必要はない」
「まあ、それもそうだね」
神藤は一度頷き、先程まで座っていたパイプ椅子に歩み寄る。
そして浮いていた鏡を手に取ると、静かに椅子に腰掛けた。
「その鏡、やはりか」
「そう。終夜君がさっき扉の前で言っていた通りだよ」
「……。その口ぶりからして、映像だけじゃなく、音声も通せる様にしていたか」
「まあね」
神藤が終夜の問いに答えた直後、鏡は光の粒子になり消えていった。
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