十二章

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あるところに、二人の双子の少女がいました。 妹は姉が大好きでした。 姉は妹が大嫌いでした。 妹は姉に、笑って欲しいと望みました。 姉は妹に、泣いて欲しいと望みました。 妹は姉に生きて欲しいと願います。 姉は妹に死にたいと願います。 妹は、姉を生かすために人を殺しました。 姉はただ、それを見ているだけでした。毎日毎日、見ているだけでした。 そしてある時、姉はふと思いました。 《人を殺すと、自分は死ねるんだろうか》 姉は自分が死ぬために、人を殺しました。 妹は、それをただ見ているだけでした。毎日毎日、見ているだけでした。 双子は毎日、人を殺しました。双子は毎日、人を死なせました。 いつしか姉は、人を殺しても自分は死なないことに気づきます。 いつしか妹は、人を殺さなくても姉は死なないことに気づきます。 けれど──それに気づくのは、遅すぎた。あまりにも、遅すぎた。 姉は狂いきっていた。 妹は壊れきっていた。 罪深き双子の少女は、どちらも終わっていた。その時は、どちらも確かに──終わっていた。 その終わっていた双子の前に、ある一人の青年が現れました。 姉妹は青年を殺そうとしました。当たり前のように、殺そうとしました。 しかし──青年は、死にませんでした。青年は、死ねませんでした。 姉妹は青年に問いました。 《貴方はなぜ死なないの?》 《貴方はなぜ死ねないの?》 青年は答えました。 《多分、死にたくないからだ》 続けざまに、青年は姉妹に問いました。 まず、初めに姉に問う。 《なぜお前は、死にたいんだ》 次は、妹に。 《なぜお前は、生きるんだ》 その問いに、姉妹は何故か“涙を流して”答えました。 二人同時に、姉妹一緒に、答えました。 《私は妹が、大好きだから》 《私は姉が、大好きだから》  
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