十三章

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消えた得物は──華奢な彼女の手の中に。 そしてその剣身は、無謀で愚かな、彼の首に添えられる。 「お前、本当に弱い。“帝”の名を背負うには、十分過ぎる程に弱すぎだ」 剣が僅かに、慎治の首に食い込む。 そこから数滴の血が流れると同時に、額から流れた汗が、彼の頬を伝っていく。 それから十数秒の間、誰ひとりとして言葉を発することはなく、ただ風の吹く音だけが、四人の耳に届いていた。 そして、先にこの静寂を破ったのは──咎吹霞夜。 彼女は小さくため息をつくと、慎治の首に添えていた剣を、ゆっくりと離す。 「…………。少しは抵抗しろ、つまらない。無駄な時間を費やした」 黙り込んだまま動かない慎治にそう吐き捨てると、彼女は彼の足元に剣を突き刺し、踵を返す。 「あいつから多少の話は訊かされていたが──お前は、帝を名乗るに値する人間ではない。 いや、そもそも異名等というくだらない名称に、“帝”を使うこと自体が間違い……」 「──あいつって……誰だよ」 「……お前も知っている人間。本人の前で言ったんだろう? 《お前は危険だ》とか何とか。だが生憎、お前の予想とは違い、今のあいつは全く危険な存在ではないけど」 彼女が誰のことを話しているのか理解出来ない慎治。 だがすぐに心当たりを見つけると、霞夜に向かって“あいつ”の名を叫ぼうとしたが──既に彼女は、この場から姿を消していた。  
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