十四章

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       ◆ 空が夕日に照らされる頃。 今だ修復されずにいるシルフォード学園の校舎の前に、この学園の学園長こと神藤の姿があった。 彼は先日あった事件によって壊された校舎を見渡しながら、小さくため息をついた。 「……修理代、どうしましょうか」 神藤自身が直すという手段もあるのだが、彼だけでは少々時間が掛かりすぎる。 一番手っ取り早いのは、本部の人間に修理を依頼することなのだが──そもそも本部は何でも屋ではない訳で、第一、今は緊急事態だ。いくら神藤の立場であっても難しいだろう。 「他に頼む当てはありませんし……襲撃者が何者かも、判りませんし」 神藤は、襲撃をしてきた男が鬼ということを知らない。いや、あの場にいた表の人間は、皆知らないだろう。 そして、どれだけ表の人間が調べようが、鬼を知ることは不可能だ。 なぜなら、彼らは人の歴史から忘れられた存在だから。 「休園、延ばすしかないみたいですね」 神藤はそう言い残すと、校舎に背を向け、シルフォード学園を立ち去った。 それから暫く経ち、地上を照らしていた夕日は沈み、辺りを闇が包みだす。 そして闇が地上を支配した頃、人間に忘れ去られた者たちが騒ぎ出す。 その者たちは忌み嫌われた力を持つゆえに、地上から地底に落とされた。 そんな彼らが出てくることを、彼らを知っている者たちからしたら、とても望ましいことではなかった──。 今宵は長い夜になりそうだ。  
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