一章

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「…………」 青年は建物の中に入ると、無言で中央にある受付に向かう。 建物の内部の壁、床ともに白色で、他の物も全てがその色で統一されており、その中を沢山の人が行き交っている。 青年は受付に着くと、そこにいる女性を無視して奥にある通路を進もうとする。 「あっ、すみません。一般の方をこの先に通す事は出来ないのです」 女性は素通りしようとした青年を、若干焦ったように呼び止める。 「はい、これ」 青年は始めから聞かれることを判っていたのか、すぐに上着のポケットからカードのような物を取り出し、それを女性に突き出した。 訝しげな表情で、そのカードを見る女性。 すると突然、彼女は驚き、目を見張る。 「──っ! ま、まさか……貴方があの剣て──」 彼女が全てを口に出す前に、青年は彼女の口を片手で塞ぐ。 「はい、そこまで。それから先は言わないでくれ。 こんな場所で騒がれると、何かと面倒な事になりそうだから……いいよな?」 「……、はい」 「よし、じゃあ行かせてもらうからな。お勤めご苦労様」 挨拶代わりに片手を上げ、彼は今だに驚きを隠せないでいる女性を置いて、通路の奥へと消えていった。  
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