一章

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自室に入り、壁側にあるシングルベッドに腰掛け、彼は静かに息を吐く。 (お二人とも、相変わらずの様ですね) 「ああ。相変わらず、怠そうにしていたな」 そう言って、終夜は背中からベッドに倒れ込む。 (まあ、急に変わられても困りますけどね) 「そうだな……ところで氷劉、もう出て来ても構わないぞ。あの二人はお前の事を知っているんだしな」 (そういえばそうでしたね。ならマスター、お願いします) 「ん。『心解』」 終夜がそう唱えると、彼の胸の辺りから、ぼんやりと光る玉が現れた。 その玉は彼の周りをフラフラと浮いていたかと思うと、突然強烈な光を放ち── 「んー。マスターの部屋の匂いを嗅ぐの、久し振りです」 森の時と同じ様、宙に浮く白い蛇となった。 「終夜ー、ご飯よー!」 氷劉が現れたのとほぼ同時に、下から終夜を呼ぶ女の人の声が聞こえた。 「結局眠れなかった」とつぶやくと、彼は体を起こしてベッドから立ち上がる。 氷劉は、ベッドから立ち上がった終夜の首に巻き付き、彼は巻き付いてきた氷劉を撫でながら一階へと下りて行った。  
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