特別授業 ~駐輪場~

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「何やねん!お前」 「いいじゃん、家近いんだし…乗せて?」 嫌そうな顔をしつつも、ちょっと顔赤くなってるよ? 錦戸は上目遣いに弱い、昔から。 「しゃーないな」 「くふっ、やった」 「し、しっかり掴まっとけや」 「はーい」 聖はいつも赤西の腰に手回してるけど、それもなんか嫌だ。 だからって掴まらないのも危ないし、この行き場のない手はどうしたら… 「はよ、掴まれや!」 そう言われて、慌てて錦戸の制服を掴んだ。 「…落ちても知らんで?」 「ほいほーい」 「色気のない返事やなぁ」 駐輪場から校門まで少しの距離なのに、すっごい注目浴びた。 錦戸と2人乗りしてるから? こいつのファンにも見られただろうなー、明日学校行ったら絶対机の中の教科書消えてそう。 涼しい風を感じながら、錦戸のちょっと大きい背中にしがみついた。 ふと頭に浮かんだ幼い頃のこいつと俺。 あの頃は毎日楽しかったなぁ… "たちゃねりょぉりょのことすき" …好きだったけど、今は嫌い。 理由?理由なんかない、理由ないけど嫌い。 とりあえず、嫌い。 「上田、着いたで?」 「ありがとー」 よいしょと荷台からおりて、前のカゴからカバンを取る。 「なぁ、上田…」 「なーに?」 「この前のこと、俺も忘れるからお前も忘れろや」 なにそれ、まだ告白もしてないくせに…ちっちゃい男。 まぁ告白されても困るだけなんだけど…少しだけ、胸がきゅってなった。 「ん、じゃあね」 「おん」 返事をすると、走り出す自転車…あの頃とは違う後ろ姿を見て、また胸がきゅっとなった。 20100717
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